2018年8月19日日曜日

有機農業新規参入者支援の方向性


若い人が多いということは、それだけで、それがわたしたちの「未来の姿」と考えることができる。有機農業者の平均年齢は59歳で、農業全体の平均年齢66歳よりも7歳も若い。


新・農業人フェアにおける就農希望者の意識(全国農業会議所調べ)によると28%が「有機農業をやりたい」と希望し、65%が「有機農業に興味がある」と答えている。逆に「有機農業に興味がない」は7%しかなかった。

農業への新規参入者は増えている。2016年の新規就農者は6万150人となり、2年連続で6万人を超えた。このうち49歳以下は2万2025人で、3年連続の2万人超えとなった。




上の図は、一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターの平成28年度新規就農者の就農実態に関する調査結果より作成している。全国農業会議所の調査は、2010年、2013年、2016年の新規就農者の動向が比較できる。「就農した理由(3つまで選択)」の調査で一番多いのは、もちろん「農業が好きだから」であった。農業が好きでないと、人生をかけて農業の世界に入ってこないと思われるので、これが1番になるのは、無理なく想像できる。そして2番目が「自ら経営の采配を振るえるから」、そして、その次が「農業はやり方次第でもうかるから」が続く。このことから新規就農者の多くが、農業経営にやりがいを求めて、積極的に参入してくる人が多いことがわかる。この2つの項目は2010年、2013年、2016年とだんだん増えてきている。


就農時の年齢で見てみると、若い世代ほど「自ら経営の采配を振るえるから」、「農業はやり方次第でもうかるから」という理由で就農してきた人が多いことがわかる。そして、その傾向は、年を経るごとに増えてきていることもわかる。



逆に、「有機農業がしたいから」や「食べ物の品質や安全性に興味があったから」という項目は、2010年、2013年、2016年とだんだん減ってきている。

就農時の年齢で見てみると、若い世代ほど、「有機農業がしたいから」や「食べ物の品質や安全性に興味があったから」という理由で、就農する人は少なく、60歳以上で多いことがわかる。「3つまで選択」というアンケート調査なので、「有機農業がしたいから」や「食べ物の品質や安全性に興味があったから」は上位ではなく、「自ら経営の采配を振るえるから」や「農業はやり方次第でもうかるから」という動機よりは低いということがいえる。


新規就農者のうち、有機農業や減農薬栽培に取り組んでいる割合。2割の方が、全圃場で取り組んでいて、5%の方が圃場の一部で取り組んでいる。


新規就農者のうち、6.2%が有機JAS認証を取得している。有機JASの取得は、日本の農業全体の1%にも満たない状態なので、6%というのは非常に多いといえる。有機JAS取得には、転換期間を3年ほど置かなければならいため、就農1年目よりも5年目以降の人の方が有機JAS認証の取得も多い。


新規就農者の経営面での問題と課題。一番は「所得が少ない」で、次は「技術の未熟さ」となっている。この1位と2位は関連が深いかもしれない。技術が未熟なので、品質が悪かったり、計画通りの生産ができてなく、所得の低下につながっているのではないだろうか?



上のグラフは、2010年、2013年、2016年のアンケート調査の合計である。よって合計は300%になる。新規就農者が「今後、5年くらいの農業経営の展開において重要と思われる項目」としては、1番が「技術の向上」であり、2番目が「規模拡大」、3番目が「販路拡大」、4番目が「品質向上」で、これで全体の半分となっている。その次、5番目が「雇用の導入」、6番目が「単位あたりの生産量の拡大」、7番目として「コストの削減」が続く。

技術が未熟で、単位面積あたりの収量が少なく、その結果、収益が少ないのではなか? 単位面積あたりの収量が少ないことを、作付け面積を拡大することで補おうとしているのではないかと考えられる。しかしこれは大きな悪循環であり、まずは負のスパイルからの脱出を図るために、一番の技術力を上げることが、もっとも重要といえる。

農業者に農薬散布についてどう思うかを率直に質問してみると、農薬は生産コストであり、使わないで生産できるなら、その方が良い、その方が利益が増えるという回答が返ってくることが多い。農薬自体の購入費用と、散布のための労力が必要ないのなら、それは経営面には、大きなプラス要素である。

病害虫が発生していて、農薬を散布する必要が生じているのに、痩せ我慢して、無理やり農薬を使わないというのでは、生産がおぼつかない。作物自体の健康状態を向上し、病害虫に強い作物にするか、または、土づくりや圃場管理技術によって病害虫の被害が少な圃場にする必要があると考えられる。