2017年9月28日木曜日

高品質・良食味・多収穫のお米作りのポイント

高品質・良食味・多収穫のお米作りのポイント

Ⅰ.秋ワラ処理は絶対必要。

①ワラを分解するのはバチルス菌。バチルス菌が消化酵素をつくるのに苦土が必要不可欠。水酸化マグネシウムを施肥する。ワラには天然の納豆菌の仲間がたくさんついている。それらを活性化させるには、苦土(マグネシウム)が必要。
②酢物は腐りにくい。田んぼが酸性なら、ワラは腐食分解しにくい。カキガラ石灰を入れてpH=6.5にする。
③ワラのC/N=50くらい。ワラには窒素が足りない。発酵鶏糞で窒素と発酵菌を補ってやることで、腐食分解を促進。発酵鶏糞は①価格が安く、②ワラを分解する微生物がたくさん含まれているという点で優れている。

ワラの腐食分解には積算温度で600℃×日が必要。20℃なら30日くらい。台風の襲来などで、田んぼに入れないときもあるが、時期が遅くなっても、秋ワラ処理はやった方が良い。
腐食分解をしているのは、酸素が必要な好気性菌による分解のため、あまり深く鋤き込むと分解しにくい。

ワラの分解の目安は、切りワラの両端を引っ張ってちぎれるかどうかで判断する。新鮮なワラなら絶対にちぎれない。ちぎれるということは、センイの中に水が浸みこんでいるから、だから、ひっぱたら、ちぎれる。浮いているワラは水をはじいているので腐っていない。

肥料が腐敗しにくい土壌に改善できる。これには乳酸菌を使用する。乳酸菌は腐敗菌の活動を封じ込むことができる。腐敗菌によって肥料が腐ってしまっては、根が伸びないし、ひどい場合には死んでしまう。根が死んでしまっては、高品質・多収穫は難しい。



Ⅱ.いっせいに活着・いっせいに分ケツ・いっせいに出穂の三拍子がそろわないといけない。


この三拍子がそろうと、稲の姿が扇形ではなく、穂の位置がすべて同じ高さになる。
遅れて出てくる穂は、稲刈りまでに熟さないので、収穫できない。そういう無効分ケツがない。

40本も分ケツしても、半分しか収穫できないとなると、収量は上がらない。
止め葉の大きさが肘から手先までの長さを超えるほど大きくなる。
一茎あたりの粒数も多くなる。普通は120粒くらいのところ160粒くらいになる。
粒が多くても、中身が熟していない殻だけの実ではいけない。


すべての実を熟して、収穫しなければ、多収穫にはならない。ゆえにいっせい出穂が重要になる。

「なっとく有機」は徳島県の南の方でしか手に入らない有機米をおいしくする肥料。地鶏阿波尾鶏の発酵鶏糞50%に地鶏の出荷できない部位50%、頭とか血とかを熱湯でボイルして殺菌して、発酵鶏糞の発酵菌で鶏の残さのタンパク質をアミノ酸に分解したもの。

上の写真は、左は化学肥料で栽培。右は「なっとく有機」で栽培。右の「なっとく有機」の方が、根の伸びも長く、深く、葉の幅も広く大きいことがわかる。「なっとく有機」は溶けやすく、溶けやすい分、吸収もよく、生育もよくなる。窒素をアミノ酸態で供給できる発酵肥料は、細胞をつくるときに、光合成によって生産された炭水化物をあまり消費することなく、細胞をつくることができ、炭水化物を植物体内に余らせることで、セルロースでできた外壁を強化できたり、生長のためのエネルギーをたくさん使えたり、ミネラルを溶かして吸収するために、根から出す根酸を増やすこともできる。

はじめの「いっせい活着」でつまずかないことを重視する。そのための準備を行う。

①苗の工夫→稲苗をつくるときに「みみず覆土」を使う。根の張りを良くする効果がある。
②田んぼの工夫→元肥として「なっとく有機」を使う。水を入れる前の乾いている田んぼに「なっとく有機」を均一に散布しトラクターで耕転する。入水するときに酵母菌液を流し込む。ここで重要なのは、酵母菌液の活性度合が重要になる。ドライイーストの酵母菌を黒砂糖で目覚めさせて、活性がピークになったころに田んぼに移し、有機質肥料である「なっとく有機」を食べさせ、酵母菌をさらに増やす。酵母菌は田んぼの深いところまで浸み込んでいき、炭酸ガスを発生させるので、土壌を団粒化させて、稲の根を深くし、根の量を増やすことになる。また、酵母菌はさまざまな生理活性物質をつくり、稲に供給するため稲の生育がよくなる。酵母菌の培養は、稲苗用の育苗ハウスの中なら、4~5時間で完了する。酵母菌が活性化してくると、pHが下がり始める。4.5くらいまで下がったら完成。


Ⅲ.抑草対策

「なっとく有機」を表層施肥するとトロトロ層ができて雑草が生えにくくなる。
①「なっとく有機」による表層の濃度障害。雑草のタネの発芽したての弱い根や芽に高濃度の肥料を吸収させて焼いてしまう。
②ミジンコなどの微生物の活性により水が濁り、光が遮蔽される。ミジンコなどの微生物の活性には、水田土壌から発生するガスが、硫化水素やメタンのような有毒なものでなく。酵母菌由来の炭酸ガスで、稲の根が健全で、根からの酸素の供給が多いことが重要。


Ⅳ.水酸化マグネシウムの追肥
田植後、1ヶ月くらいで、水酸化マグネシウムを1反あたり20キロほど追肥する。これは土壌の微生物の活性のため。光合成促進のために硫酸マンガンを1反あたり2㎏入れるのも効果がある。



2017年9月23日土曜日

人間はビタミンCがつくれない

1.植物にとってのビタミンCの役割

はじめに、植物にはビタミンCを多く含んでいるものがある。そのビタミンCは植物の中でどのように使われているのだろうか?
ビタミンCをもっとも使用しているのは、光合成をしている葉緑体の中。光合成は光を電気に変えて水を電気分解することで水素を取り出している。光がないと仕事にならないのだが、太陽光は葉緑体自体を日焼けさせてしまい、その過程で発生する活性酸素が葉緑体のタンパク質を酸化してしまう。この酸化を防ぐために、ミトコンドリア内で生成されたビタミンCを、葉緑体に運び込み、酸化を防止しているのである。

2.人間はビタミンCがつくれない生きもの

ライナス・カール・ポーリング博士は、量子力学を化学に応用した先駆者であり、「化学結合の本性、ならびに複雑な分子の構造研究」を記述した業績によ、1954年にノーベル化学賞を受賞。1962年、地上核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞を受賞。単独でノーベル賞を2度受賞した数少ない人物の一人である。20世紀におけるもっとも重要な化学者の一人といわれるほどの博士。その博士が後年、大量のビタミンCや他の栄養素を摂取する健康法を提唱した。


ライナス・ポーリング博士は「人類がビタミンC合成する能力を失ったのは脳を守るためだ」と述べている。

体内で合成できないため、食べ物から摂取しなくてはならない必須栄養素はいろいろあるが、他の動物はビタミンCを自力でつくることができるが、人間はビタミンCを体内で合成できない。

6500万年前に恐竜が絶滅し、哺乳類が繁栄する時代がはじまる。サルの先祖は、6300万年前に、アビダス類(曲鼻猿類)とオモミス類(直鼻猿類)に分かれる。サルの先祖は、地上がネズミ類の先祖に占領されてしまったために、木の上に棲みかを求めた。木の上で生活をするために、距離感を正確に認識する必要に迫られ、立体視ができるように進化した。そのため目の位置がサイドではなく、正面を向くようになったと考えられている。目が正面を向いてついているのがオモミス類(直鼻猿類)である。

6300万年前のオモミス類(直鼻猿類)への分岐によって、オモミス類(直鼻猿類)は、ビタミンCをつくる能力を失ったと考えられている。ビタミンCをつくる酵素をつくる遺伝子は持っているが、発現しないように眠っている状態になっている。

オモミス類(直鼻猿類)には人間以外に、オラウータン・ゴリラ・チンパンジー・メガネザル・クモザル・オマキザル・サキザル・オナガザルがいる。

ちなみにアビダス類(曲鼻猿類)には、アイアイ・キツネザル・ガラゴ・ロリスがいる。

多くの動物はブドウ糖(グルコース)を原料にLグロノラクトンオキシダーゼという酵素を働かせビタミンCを体内で合成している。霊長類はこのLグロノラクトンオキシダーゼが働かないのである。つまりビタミンCの生成を封印している状態なのである。


ビタミンCは副腎がアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンを産生するときの原料になる。そのためか、副腎における濃度が体内で一番高く、血中濃度の150倍もある。アドレナリンは、闘争と逃避のホルモンと呼ばれ、動物が獲物を襲うときのストレス反応や、逆に捕食者に狙われた時に瞬時に逃げるストレス反応を全身の器官に引き起こすホルモン。コルチゾールは強力な抗炎症、抗ストレス作用をもつホルモン。

脳はブドウ糖(グルコース)のみを栄養にして活動しているが、もし、人間にビタミンCを体内でつくる能力が失なわれていなかったら、強いストレスを感じると、コルチゾールをつくるための原料として、ブドウ糖をビタミンCに変えてしまい、結果、脳が低血糖状態になって、思考能力が低下してしまうのではないかと考えらえている。脳を守るためには、脳で使いたいブドウ糖を極端に消費してしまうビタミンCの合成は不要となったのだったのだろう。


しかし、人間はビタミンCの自己生成能力を失っため、ビタミンC欠乏で副腎疲労を起こし、大きなストレスを受けることとなった。そして人間は食べ物からビタミンCを摂取しなければならない宿命を背負った。1日あたりの摂取量は、男女とも成人で100㎎。妊婦の場合は1日110mg、授乳婦の場合は1日150mgが必要と考えらえている。


3.ビタミンCの体内での使われ方


①シミの予防
表皮は角層・顆粒層・有棘層・基底層の4層でできている。一番下にある基底層には、メラノサイトという色素細胞があり、肌に紫外線が当たると表皮の下にある真

皮に紫外線が届かないようにメラノサイトがメラニンという色素を合成する。強い紫外線に当たると日焼けするのは、このメラニンが合成されるから。

メラニンは、通常は皮膚のターンオーバー(新陳代謝によって深いところでできた細胞が表面に登っていって垢となって排出されること)が進むにつれて角質などの

不要物と一緒に垢になり体外に排出されます。一般的には、一度生成されたメラニン色素は28日~56日程度で体外に排出される。

ターンオーバーがスムーズに行われない状態になると、メラニン色素がうまく排出されずに色素沈着を起こし、シミとなる。

ビタミンCには、シミの原因であるメラニン色素の過剰生成を抑える効果がある。また、色素沈着したメラニン色素を元の色素に戻す還元作用がある。そのため、一

度できたシミを薄くすることができる。

②シワの予防と改善
シワの主な原因は、皮膚のコラーゲンの減少。年齢を重ねていくと、皮膚の細胞の新陳代謝などの働きも次第に活発ではなくなり、肌の弾力とハリに大きく関係がある皮膚の真皮にあるコラーゲン・エラスチンと・ヒアルロン酸を生成する繊維芽細胞の働きが衰えて、コラーゲン・エラスチンと・ヒアルロン酸がうまく生成されなくなり、肌の弾力がなくなっていく。

ちなみに、赤ちゃんの肌にすごく弾力やハリがあるのは、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸が正常に生成されているから。

加齢の他にも、紫外線もシワの原因の一つ。皮膚の深部まで届いた紫外線がコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸自体を破壊してしまうから。肌の弾力やハリがなくなると、肌の柔軟性もなくなってクセがつきやすくなりシワができやすくなる。皮膚をよく動かす口元や目元の部分からシワができていく。ビタミンCは、真皮のコラーゲンの生成を助ける働きがある。また、コラーゲンを生成する時に働く酵素を助けている。

③ニキビ予防
皮脂が過剰に分泌されると、皮脂で毛穴に詰まってしまい、その詰まった皮脂をエサにしてアクネ菌が繁殖して炎症が起こり、ニキビとなる。ビタミンCには、皮脂の分泌量を正常な量に抑える働きや抗炎症作用がある。肌の毛穴の開きは、皮脂が過剰分泌されることで悪化するので、ビタミンCによって、皮脂の分泌を抑えると毛穴を目立たなくできる。

④疲労回復
ビタミンCには、活性酸素の発生抑制効果がある。

⑤免疫力UP
ビタミンCには、体内に侵入したウイルスを排除する働きがある白血球を強化し、免疫力を高めてくれる。

⑥貧血防止
ビタミンCには、体内に取り入れた鉄の吸収率を上げるので、貧血を防ぐことができる。

⑦ストレス解消
ビタミンCは、副腎皮質ホルモンを合成するために必要な成分で、十分にビタミンCを摂取すると、副腎皮質ホルモンの分泌を促進させることができる。

4.壊血病はそうそう起こらない

健康な人体には900~1500mgのビタミンC(アスコルビン酸)が存在しており、体内のビタミンCが500mgを切ると脱力や体重減少、鈍痛に加え、次のような症状が見られる。いわゆる壊血病である。
①皮膚や粘膜、歯肉の出血およびそれに伴う歯の脱落、変化、これらの影響で息が臭くなる。
②創傷治癒の遅れ
③低色素性の貧血
④感染への抵抗力の減少
⑤古傷が開く、末期になると骨折して治った骨もはがれる。
壊血病の原因は、ビタミンCが体内のタンパク質を構成するアミノ酸の1つであるヒドロキシプロリンの合成に必須であるため、これが欠乏すると組織間をつなぐコラーゲンや象牙質、骨の間充組織の生成と保持に障害を受ける。これがさらに血管等への損傷につながり上記のような症状になる。
ただし、上記のように健康な人体には「500mgを切る」までのビタミンCに余裕があるので、これらの症状は3~12ヵ月に及ぶ長期・高度のビタミンC欠乏でないと生じない。大航海時代の慢性的な壊血病の発生は、出帆前からビタミンC欠乏の生活をしていた船員に発生したものであると考えらえている。

厚生労働省が定めるビタミンCの1日の所要量は800㎎と多い。これは壊血病を防ぐために算定された最低必要量であるといわれている。ビタミンCは水溶性なので、ほとんどが尿と共に体外に排出されてしまうので、ビタミンCの効果を実感するには1日300〜500mgを摂取する必要がある。但し、人によっては、1000㎎で過剰摂取の副作用として下痢を起こすことがあり、2000㎎を一回で摂取すると吐き気をもよおすことがある。また、過剰摂取で尿路結石を起こすことがある。












抗酸化力とは何か?


野菜から得られる栄養のうち、「抗酸化力」とは何でしょうか? それについて解説します。

1.生きものはみなエネルギーを燃やしている。



上の写真、右は人間の手のひら、左は小豆の根。写真は九州大学のHPより。私たちの体は、ホタルの光の1億分の1くらいの光を放っている。この光を「バイオフォトン」という。生きものはみな、微弱ではあるが光を出している。その光の源は何かというと。生きものはみな、糖を原料に呼吸によって、糖の中よりカロリー(熱量)を取り出して、生きるエネルギーにしている。その生きるためのエネルギーが光っているのである。

わたしたちは酸素を使って生きるためのエネルギーを得ている。そのため、わたしたちは酸素がないと生きてはいけない。しかし、酸素は諸刃の剣で、酸素によって、わたしたちの体を構成する細胞は、毎日、ゆっくりと酸化されている。このゆるやかな酸化が細胞の老化、老朽化の犯人でもある。





上の写真はミトコンドリアの電子顕微鏡写真。わしたちが食べた食べ物は、胃腸で消化されて分子にまで分解されて、血液といっしょに細胞へ運ばれ、細胞の中のミトコンドリアの中で水素イオンにまで分解されて、酸素と結合し水になる。このとき水素イオンと反応させるために酸素分子が活性化される。その酸素のうち、およそ0.1%ほどが漏れ出てしまう。これは活性酸素と呼ばれ、これが細胞のタンパク質や遺伝子を酸化させて破壊していってしまう。遺伝子が壊れた場合は正常な複製ができなくなりガン細胞となってしまう。



上の図の上の方が「普通の酸素分子」。下が活性酸素の代表的なものスーパーオキシドラジカルで、原始核の陽子の周りを回る電子が1個足りない。電子が足りないスーパーオキシドラジカルは、周辺の細胞のタンパク質や遺伝子から電子を奪い酸化する。電子を奪われた分子は不安定になり、また周辺の分子から電子を奪うという連鎖反応をお越し、次第に細胞の分子構造を壊していってしまう。

活性酸素は上の図の12種類が知られている。

2.生きものはみな細胞の酸化防止機能をもっている


上の写真は25億年前の酸化鉄の地層。海水中に溶けていた鉄が酸素と反応し酸化鉄になって海底に降り積つもり、この地層ができた。原因をつくったのは、ストロマトライトという酸素を発生させる光合成ができるように進化した生きものによる。

地球が誕生したとき、地球には酸素が少なかった。地球の酸素は、30億年前にはシアノバクテリアが光合成をすることにより作られ始めたと考えらえている。発生した酸素は、はじめのうちは海水中の2価の溶解鉄と化合して、酸化鉄を作り縞状鉄鉱床を形成。海中の鉄を酸化しつくした酸素ガスは27億年前くらいから大気中にあふれ出し、17億年前には大気中の酸素含有比率は10%に達し、大気中の二酸化炭素と酸素の比率が逆転したのは7~8億年前と考えられる。酸素は化合力が強い物質なので、タンパク質でできている生きものにとっては、タンパク質を酸化して破壊してしまう猛毒である。24億年前には、増えてきた酸素によって嫌気性の生物の大絶滅が起こったと考えらえている。


しかし、わたしたちは酸素が無いと生けていけないほど、酸素に依存している。酸素が無くては生きていけない生物には、活性酸素を除去するさまざまな機能がある。人体には、上の図のように、①活性酸素の発生を抑制する。②活性酸素を除去する。③細胞の修復・再生する。機能がある。活性酸素を抑制したり、除去したりする上記の物質は「抗酸化物質」とよばれ、ビタミンやポリフェノールなどがある。人間は野菜を食べることで、これらの「抗酸化物質」を得ることができる。

動物は野菜を食べることで「抗酸化物質」を得ることができる。植物である野菜は「抗酸化物質」を自力でつくることができる。


上の図は、活性酸素を除去する酵素である。スーパーオキシドラジカルを過酸化水素に変えるスーパーオキシドデスムターゼにはマンガンが含まれているタイプと、銅‐亜鉛が含まれているタイプがある。過酸化水素を水に分解するカタラーゼには鉄が必要である。活性酸素を除去する酵素に必要なミネラルの供給源も野菜である。


活性酸素を除去する仕組みについては、詳しくは上の図のようになる。野菜を食べると、それに含まれているビタミンやミネラルが「抗酸化物質」として活性酸素を無害な水に分解し、活性酸素による細胞の酸化、老化を防止している。

余談ではあるが、酸素をたくさん消費する生物ほど短命というデータがある。
活性酸素を除去する酵素であるSOD(スーパーオキシドデスムターゼ)が体内にたくさんある生きものほど長寿であるというデータがある。

3.ストレスを受けると細胞を酸化する活性酸素が増える。



酸素をつかって生きている限り、避けられない活性酸素。その活性酸素は上の図のようなストレスや外的要因でも増えることが知られている。現在のストレス社会は、細胞の酸化・老化を加速しやすいといえる。

人間の場合、ストレスを受けると臓器に血流が行かなくなり、ストレスが除かれると再び血流がはじまる。この状態が繰り返すと活性酸素が発生しやすくなる。

激しい運動は、酸素をたくさん消費する。酸素の消費量が増えると活性酸素の発生量も増える。

紫外線に当たると活性酸素を発生させる物質が皮膚の下にある。

細菌やウイルスを撃退し排除するために活性酸素を活用しているため、細菌やウイルスの侵入は活性酸素を増やす。

化学物質は活性酸素を増やす。人体に有害な化学物質が体内に入ってきたとき、それを分解し解毒するために活性酸素が活用されている。また、排気ガスはそれ自体に活性酸素が含まれている。

特に体内に活性酸素を多く増やすのがタバコの喫煙。上の図はタバコを吸ったときの人差し指のバイオフォトンの写真。人差し指の先端で活性酸素が増加していることがわかる。

4.野菜の抗酸化力の調べ方


活性酸素を除去する力がある野菜。その野菜の抗酸化力を測定する方法として、DPPHラジカル法というのがある。

DPPHはジフェニルピクリルヒドラジルの略称で、人工的につくられた安定したラジカルで、溶液は黒紫色をしている。これに野菜から抽出した溶液を入れると、野菜のさまざまな抗酸化物が、DPPHを実際に消去するので、DPPHは次第に色が薄くなり、最終的には無色になる。この薄くなっていく色の吸光度を測定し「抗酸化力」を調べることができる。測定には人工的につくったビタミンEであるトロロックスと比較して調べる。

この測定法には弱点が2つある。
①DPPHラジカル法は、水溶性成分に適しており、β‐カロテンやリコピンなど脂溶性成分はあまり抽出されない。栄養価コンテストにおいては、本来抗酸化力強い人参が抗酸化力の数値が大きくないのは、このためである。
②DPPHラジカル法では固形の試料は、溶液にする必要があり、その際には通常、50%エタノール溶液で野菜を破砕して、成分抽出液をつくる。ビタミンCは非常に強い抗酸化力のある物質であるが、エタノールでは抽出されにくいといわれている。
栄養価コンテストではビタミンCの項目を別に設けて対応している。

多くの動物はビタミンCを自力でつくることができるが、人間は作れない。
人間はビタミンCをつくれない。

2017年9月11日月曜日

生態系調和型農業理論 Bio Logical Farming (バイオロジカルファーミング)のご紹介

生態系調和型農業理論 Bio Logical Farming (バイオロジカルファーミング)のご紹介

日本には、さまざまな農法がある。その中で、なぜ? 有機農業を目指すのか? なぜ? 有機農業を目指すなら、BLOF(ブロフ)=Bio LOgical Farming(バイオロジカルファーミング):生態系調和型農業理論が最適なのでしょうか? 

農業は農産物をつくる産業。農産物を生産し社会に貢献する仕事。では、その具体的に生産している農産物とは、私たちにとって、社会にとって、いったいどのようなものなのでしょうか?

「野菜を食べる理由」それは何んでしょうか?


「野菜を食べる理由」それは一言でいえば、「美と健康のため」ではないでしょうか?身心の健康を保つために、毎日、野菜を食べている。女性にとっては、野菜をとならいことは、肌荒れなどの原因となるため、「野菜をたべること」と「美と健康」は、切実にイコールなのではないでしょうか。

「トマトが赤くなると、医者が青くなる」は、もともとは「柿が赤くなると、医者が青くなる」というのが大元らしい。意味としては夏には体調を崩す人も多いが、食欲の秋になると、気候も過ごしやすくなり、実りの秋の栄養豊かな食に支えられて、病気になる人が減るから、医者が儲からないという意味らしい。ヨーロッパには「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という諺があり、これが混じって柿がトマトになったのだろうという。しかし、実際にトマトに含まれる赤色成分のリコピンには、病気を予防する効果がある。動物実験のレベルではあるが、ガンや動脈硬化や心臓病を予防する力があることが証明されてきている。


近年の医学の進歩によって、医食同源はまさに、そのままの意味であることが明らかになってきている。農家として、わたしたちが生産している野菜は、それを食べる人の健康に直結している。この事実から目をそむけてはいけないだろう。そしてもっと真摯にこの課題に取り組むべきではないだろうか。


野菜には、私たちの体の健康を保つための栄養と、体の美しさを保つための栄養がたくさん含まれている。①ビタミン類やポリフェノールやカロテノイド類などの抗酸化物質は、細胞の老化を防止する効果がある。動き回ることができない植物は、太陽の日差しが強烈でも日陰に逃げ込むことができない。そこで太陽からの紫外線によって自分の細胞が傷つかないように、さまざまな抗酸化物質を体内につくっている。②私たちが健康な生活をおくるために欠かせないミネラルも野菜から摂取しているものは多い。ミネラルは新陳代謝を担っている酵素が健全に働くために必要不可欠なものでもある。③野菜からとれる食物センイが腸内細菌を活性化し、血液やリンパの流れをよくし、免疫力を高めるということもわかってきている。野菜からとれる栄養についての研究は進んでいる。

栄養価コンテストでお世話になっているデリカフーズさんでは、野菜の力として①老化防止の抗酸化力、②体内の必要ない物質の排出を助けるデットクス力、③酵素の働きを助けたり、活性化し新陳代謝を促進する酵素力、④免疫を高める免疫力。の4つ野菜のチカラに注目し研究をされている。

野菜のチカラが減っている…野菜の元気が足りない!


わたしたちは現在ほど、野菜の栄養について、くわしく調べられていなかった時代から、野菜の栄養に注目して、積極的に、おいしくいただいてきた。ところが今、野菜に異変が起きている。それは野菜を食べる理由ともいえる野菜の栄養価が昔よりも、ずいぶん減ってしまっているという問題である。

1960年頃の野菜の栄養価と、現在2010年頃の栄養価を比べてみると、現在の野菜は昔の野菜に比べたらビタミンやミネラルなどの栄養価が半分くらいになってしまっている。

原因について、さまざまなことが言われている。①測定の仕方が、今と昔とでは違うとか。②旬がなくなり、旬でないとき、つまりその作物にとって適期でない時期に栽培されているから栄養価が上らないとか。③品種改良によって、現在の品種は、病気に強いが、栄養価は低いとか。さまざまな原因が考えられている。

野菜の元気が失われたのでは堆肥を使わなくなったからか?


しかし、栄養価が低くなった理由として、一番大きな理由は、④化学肥料の普及で、堆肥を使わなくなったこと。または、堆肥の質が悪くなったことにあるのではないかと考えている。


オーガニック・ファーミングの始まりは「地力回復を目的とした堆肥を使った農業」

「有機栽培」という言葉をつくった人は、イギリス人のアルバート・ハワードである。ハワードは赴任先のインドと故郷のイギリスの畑の土を比較して、驚愕した。イギリスの土壌はなぜこんなにも痩せているのか? それに比べてインドの土壌はなぜこれほどに豊かに肥えているのか? ということに、たいへん驚き、疑問を感じ、その理由を知るべく研究し、豊かさの源は堆肥であることを突き止めた。堆肥を使うことで、土壌を豊かにすることができることを発見し、堆肥を使う農業=オーガニック・ファーミング(有機物を用いた農業)と命名しヨーロッパ・アメリカに紹介した。ここに有機農業が誕生する。1940年のことである。

堆肥を使わないと、土壌は固くなり、水はけや水持ちが悪くなり、根の張りも悪くなり、病害虫にも会いやすくなる。微量要素の欠乏も起こしやすい。結果、収量と品質が下がっていくことになる。

オーガニック・ファーミングは「有機農業」という日本語に翻訳され、1971年に一楽輝雄先生によって「日本有機農業研究会」が発足することとなる。

堆肥を使わなくても、無農薬・無化学肥料栽培をもって有機農業という方もおられたりして、有機農業の現場は、現在、やや混乱しているが、原点に返るなら堆肥を使う農業=それが有機農業なのである。そして、その最大の目的は、持続可能な土壌管理と農業生産なのである。

ハワードが有機農業を紹介するために、1940年に出版した本のタイトルは『アグリカルチャー・バイブル』であった。日本で翻訳出版された本のタイトルも『農業聖典』となっている。キリスト教の国の人がバイブル(聖書)という言葉を使うのにはかなり勇気がいることだという。「堆肥を使うことで農業を持続的に行い続けることができる」ということを発見したハワードにとって、その発見は神の啓示に思えたのかもしれない。ハワードは1946年、「健康な土壌が健康な植物を育み、それが健康な体を生んでいく」という基本理念の基、世界で最初のオーガニク認証協会である「英国土壌協会」を設立する。現在、イギリスのオーガニック製品の8割がハワードが設立した英国土壌協会による認証のものとなっている。

堆肥を使うだけでは野菜の栄養価は上がらない!

堆肥を積極的に使う有機栽培でつくると、野菜の栄養価は昔のように高いものになるはず。しかし、ただ単純に堆肥を使えばよいというものでもないらしい。

有機農産物だからといって、ただ、それだけでは、すべての有機農産物が、「人々の求める野菜=人の美と健康を支える力をもっている野菜」とはいえない。有機農産物と化学肥料を普通に使って育てられた慣行栽培の農産物の栄養価や健康効果を調べる研究は、世界各国で行われているが、あまり有機農産物は優れているという結果は得られていない。

有名なところでは2009年7月のイギリスの食品基準庁の報告がある。イギリスの食品基準庁は、「一般に、有機食品のほうが慣行の農畜産物よりも栄養的に優れていて、健康に良いといわれている」ので、有機農産物の栄養価や健康効果について科学的な裏付けを得ようと考え、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の栄養公衆衛生研究チームに研究を委託したが、その結果は「有機農産物と慣行栽培の農産物で、栄養価や健康効果に大きな差はない」というもであった。詳細については「西尾道徳の環境保全型農業レポート」のHPにある。

栄養価コンテストを開催し栄養価の高い野菜の実際を確認!

人の心と身を支えることができる本気の野菜とは、いったいどんなものなのか?

しかし、「有機農産物の栄養価はたいしたことがない」という、多くの研究結果は、地に足のついてない机上の空論ではないだろうか?なぜなら、わたしたち農業者は、ほんとうに「おいしい野菜」のことを知っている。

そして、人の美と健康を支えることができる野菜作りに挑戦できるなら、やってやろうじゃないかという、ちょっとした気概に満ちている。


そこで一般社団法人日本有機農業普及協会(JOFA)が中心となり、農業者に呼びかけて、誰の野菜が一番、栄養価が高いのかを競い合う「栄養価コンテスト」を、2014年から本格的に行ている。

栄養価コンテストの目的のひとつは、栄養価の高い野菜の作り方とはどのような栽培方法なのか?それを明らかにすること。たくさんのデータを集めれば、集めるほど、作り方の正解の的は小さくなる。どのようなプロセスを経ることで「栄養価の高い野菜」をつくることができるのか?それが次第に見えてくる。「栄養価の高い野菜」をつくる栽培技術を確立することができる。

栄養価コンテストを行う、もうひとつの目的。それは他者と比べることで、自分の野菜の栄養価のレベルを知ることができる。そして、栄養価の高い野菜をつくる生産農家が誰なのかがわかる。つまりは、栽培のうまい人に教えてもらうのが、上達への一番の近道であり、その最短コースを探ることができる。

栄養価の高い野菜をつくりたいと思っても、それを自分ひとりで悩みながら、研究研鑽を積んでいくというやり方では、ともうもなく時間がかかってしまう。ひとりで悩むより、できる農家さん、栽培技術もっている農家さんに、栄養価の高い野菜の作り方を直接的に教えてもらう方が、上達も早く、達成も早い。また、栄養価の高い野菜をつくる生産農家が集まって、技術について話し合うことで技術の発展するスピードはかなり速くなるだろう。

実際に、回数を重ねることで、栄養価の高い野菜の栽培技術、土づくり技術、堆肥製造技術というもののレベルが上がってきている。

栄養価コンテストは、「人の美と健康を支えることができる野菜をつくる技術」を確立するための扉。参加するか、参加しないかはあなた次第となっている。


日本有機農業普及協会(JOFA)がおすすめしている農産物の栽培理論はBLOF(ブロフ)=Bio Logical Farming (バイオロジカルファーミング)生態系調和型農業理論は、このストライクゾーンの研究によって、栄養価が高い高品質野菜を、安定的に、多収穫する栽培技術である。


栄養価コンテストの結果から見えてきたこと。
硝酸イオンが多くなると、糖度、ビタミンC、抗酸化力は低下する。


栄養価コンテストの結果から見えてきたこと。
逆に硝酸イオンが減れば糖度、ビタミンC、抗酸化力が向上する。

日本有機農業普及協会のBLOFでは、栄養価コンテストの結果を踏まえて、①植物の生命力自体を高めて栄養価を向上させる作物栽培技術と、②土壌中の硝酸イオンを少なく抑えて、作物の栄養価低下を防止する土壌管理技術の2つの技術体系がある。

高栄養価農産物をつくる設計図がある!


BLOFを栽培技術を1枚にまとめると、上の図のようになる。有機栽培に使用する肥料を3つのカテゴリーに分類し、それぞれの①肥料の役割、②肥料を使いこなすための技術、③目指すべき目標を定めている。

(1)ミネラル肥料施肥分類:
ミネラル肥料は植物の基礎体力を向上させ、本来もっている生命力を向上させる。特に光合成能力を向上させなければ、野菜の栄養価は高まらない。ミネラル施肥は高品質・多収穫・安定生産の要となる重要な肥料である。
技術としては、土壌のミネラル栄養成分の現状値を調べる土壌分析技術・土壌分析の結果より、具体的に施肥する量を決める施肥設計技術となる。

(2)アミノ酸肥料施肥分類:
有機栽培では堆肥とは別に発酵肥料を使う。堆肥だけでは初期生育に必要な窒素の供給が足りないためである。この発酵肥料の成分が、アミノ酸であることに注目し、アミノ酸になっている良質な発酵肥料を積極的に施用し、細胞作りを促進し多収穫をめざす。
技術としては、液肥発酵技術となる。

(3)堆肥施肥分類:
堆肥は土壌を団粒化し、物理性を改善し、土中の有害微生物を抑制し生物性を改善し、微量ミネラルを供給し化学性も改善してくれる。
技術としては、土壌団粒化を促進させ根の量を増やす太陽熱養生処理
堆肥の品質が土の良し悪しを大きく左右することから、堆肥づくり技術・堆肥の見分け方技術が必要となる。

①糖をつくる光合成能力をUPする!


すこしだけ、具体的な内容に触れておきたい。上の図は、炭と水の化合物である炭水化物の化学式である。植物は上から2つ目のブドウ糖を光合成によって炭酸ガスと水と太陽エネルギーを原料に生産している。ブドウ糖は、糖度に関わる重要なおいしさ成分であり、植物が栄養成分であるビタミン類をつくるための原料になるもの、また、植物には骨がなく、体を頑丈なセルロースでできたセンイの壁で支えているが、セルロースもブドウ糖を2000から4000分子という膨大な量を結合させてつくられている。


栄養もおいしさも炭水化物。ならば炭水化物の大元であるブドウ糖をつくる光合成能力を向上させることができるなら、おいしさも栄養価も向上するに違いないということになる。炭水化物を生成する光合成は、葉緑体の中にあるたくさんの酵素の連携によって成り立っている。その酵素は多くのミネラルを必要としているため、ミネラルを十分に吸収させることができるなら、光合成能力は向上する。

上の図は、光合成を行う葉緑体のなかの、炭水化物生成を担う酵素タンパク質の図。光を受け止めるソーラーパネルに苦土(マグネシウム)、光を電気に変えて、水を電気分解している電極にはマンガンや塩素、その他、鉄や銅や硫黄、リン酸などさまざまなミネラルが使われている。このミネラルが足りなくなると、光合成能力が低下することがわかっている。

1992年にブラジルのリオで行われた「地球サミット」。このには全世界の国とNGOが集まって、宇宙船地球号の操縦の仕方、そしてわたしたちの未来が話し合われた。この会議に資料として添えられた地球の現状を示すデータのひとつ。過去100年間における土壌ミネラルの減少率。アジアでも76%減と大きくミネラルが失われているのがわかる。

原因は簡単で、持ち出すばかりで、返さないからである。野菜も穀類も農産物は、土壌のミネラルを吸収して生長している。

上の図は冨士平工業製の簡易土壌栄養成分検定器ドクターソイルによる土壌分析のようす。

上の図は、エクセルに必要な計算式を入れてつくられた施肥設計シート。土壌分析の測定値を入力し、土壌の肥料持ちを計算し、その土壌に対するミネラル肥料の施肥量を計算することができる。

②根量を多くする太陽熱養生処理技術!


ミネラル肥料をしっかり施用しても、その肥料のところまで根が届かないといけない。そこで、まだカロリーが多い状態の中熟堆肥を活用した太陽熱養生処理を行っている。



中熟堆肥のもっている多糖体をエサとして、酵母菌などの炭酸ガスを出す菌を入れると多糖体が炭酸ガスになる膨張圧で、土壌が粉々になり、まさにパンを焼くように土がふっくらとする。発生するガスと水分を逃がさないように、透明シートで覆うのがよい。

単粒構造の土壌と団粒構造の土壌の模式図。三枝敏郎著『センチュウ生態とかしこい防ぎ方』農文協2005年10刷の14~18頁より転写。土と土をくっつけているのは堆肥由来の糊状炭水化物。そこにはバチスル菌や酵母菌などが棲んでいる。間隙の空気の多いところには、好気性の放線菌や糸状菌。センチュウなどが棲んでいる。団粒構造を支えている糊状炭水化物は、微生物のエサとなり、微生物が分解することによって発生する炭酸ガスによって膨張をすることで、フカフカの土は長持ちする。


春先のイチゴの成りつかれを解消する多糖体液肥。堆肥に酵母菌を入れて再発酵させたもの。12月より収穫し始めるイチゴは、2月、3月と暖かくなるにつれて、それまでに施用した追肥の窒素が温度上昇と共に効き始め、生育が乱れることがある。上の写真の多糖体液肥は、炭水化物を積極的に施肥するもので、春に向って、温度上昇することによるあふれる窒素を炭素で打ち消し、生育を安定させるというもの。

③アミノ酸肥料で細胞づくりを加速!


タンパク質を発酵させることによって得られるアミノ酸を肥料としたアミノ酸肥料は、化学肥料とは異なり、根で吸収されたら、一度、葉に運ぶことなく、直接、根の細胞になることができる。日本では、「植物はアミノ酸態の窒素を直接吸収できない」と長らく言われてきたが、農業の実際の栽培の現場では、アミノ酸態窒素の肥料は使用され、効果を上げている。近年、アミノ酸態窒素の吸収実態の研究も進められている。

アミノ酸態で窒素を植物に供給することで、光合成によって生産された炭水化物を細胞作りに使用する量が減り、余った炭水化物を、①余った炭水化物でセンイの外壁を強化し病害虫に強くなったり、②余った炭水化物によって根酸を増やしミネラルの吸収を増やしたり、③余った炭水化物で糖度を上げたり、④余った炭水化物で貯蔵デンプンの量を増やして重くしたり、⑤余った炭水化物で栄養価を高めることができる。


上の図は、植物は、光合成によって大気中の炭酸ガスと土中の水窒素とミネラルといった無機物からブドウ糖やアミノ酸などの有機物を生成している。動物は植物を食べ、植物は動物の体になり、植物も動物も死ぬと分解者によって分解され、もとの土や大気(無機物)に帰っていく。有機栽培は、植物が再利用しやすいように、発酵技術によって、タンパク質をアミノ酸にし、セルロースを多糖体にして供給している。有機栽培は自然の循環のメカニズムに発酵を使ってバイパス(近道)をつくったということができる。


有機栽培は、実はアミノ酸態窒素を使う細胞づくり促進技術であり、堆肥を使い土壌を団粒化することにより根の量を増やす植物の体力増進技術である。有機栽培こそ多収穫・高品質・安定生産を可能にする栽培技術であるといえる。

ところが、有機栽培には大きな弱点がある。それは品質の良いものができることによって、土壌からより多くのミネラルをくみ上げてしまうことである。アミノ酸肥料を使うことで、細胞づくりが促進され、光合成によって生成された炭水化物が余る。余った炭水化物によって、根酸が増え、土中のミネラルは、より多く吸収され、畑から持ち出される。

有機栽培においては、まず何より植物の生理や自然生態系のメカニズムを学び、自然の法則を知ることがとても重要なことになる。自然は人間の都合によって、その法則性を曲げてはくれない、しかし、このことはとても重要で、自然生態系の法則と農業をうまく調和させたならば、自然生態系は、確実性の高い豊かな実りを約束してくれる。

自然は自らの法則を決して裏切らない!