2017年9月23日土曜日

人間はビタミンCがつくれない

1.植物にとってのビタミンCの役割

はじめに、植物にはビタミンCを多く含んでいるものがある。そのビタミンCは植物の中でどのように使われているのだろうか?
ビタミンCをもっとも使用しているのは、光合成をしている葉緑体の中。光合成は光を電気に変えて水を電気分解することで水素を取り出している。光がないと仕事にならないのだが、太陽光は葉緑体自体を日焼けさせてしまい、その過程で発生する活性酸素が葉緑体のタンパク質を酸化してしまう。この酸化を防ぐために、ミトコンドリア内で生成されたビタミンCを、葉緑体に運び込み、酸化を防止しているのである。

2.人間はビタミンCがつくれない生きもの

ライナス・カール・ポーリング博士は、量子力学を化学に応用した先駆者であり、「化学結合の本性、ならびに複雑な分子の構造研究」を記述した業績によ、1954年にノーベル化学賞を受賞。1962年、地上核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞を受賞。単独でノーベル賞を2度受賞した数少ない人物の一人である。20世紀におけるもっとも重要な化学者の一人といわれるほどの博士。その博士が後年、大量のビタミンCや他の栄養素を摂取する健康法を提唱した。


ライナス・ポーリング博士は「人類がビタミンC合成する能力を失ったのは脳を守るためだ」と述べている。

体内で合成できないため、食べ物から摂取しなくてはならない必須栄養素はいろいろあるが、他の動物はビタミンCを自力でつくることができるが、人間はビタミンCを体内で合成できない。

6500万年前に恐竜が絶滅し、哺乳類が繁栄する時代がはじまる。サルの先祖は、6300万年前に、アビダス類(曲鼻猿類)とオモミス類(直鼻猿類)に分かれる。サルの先祖は、地上がネズミ類の先祖に占領されてしまったために、木の上に棲みかを求めた。木の上で生活をするために、距離感を正確に認識する必要に迫られ、立体視ができるように進化した。そのため目の位置がサイドではなく、正面を向くようになったと考えられている。目が正面を向いてついているのがオモミス類(直鼻猿類)である。

6300万年前のオモミス類(直鼻猿類)への分岐によって、オモミス類(直鼻猿類)は、ビタミンCをつくる能力を失ったと考えられている。ビタミンCをつくる酵素をつくる遺伝子は持っているが、発現しないように眠っている状態になっている。

オモミス類(直鼻猿類)には人間以外に、オラウータン・ゴリラ・チンパンジー・メガネザル・クモザル・オマキザル・サキザル・オナガザルがいる。

ちなみにアビダス類(曲鼻猿類)には、アイアイ・キツネザル・ガラゴ・ロリスがいる。

多くの動物はブドウ糖(グルコース)を原料にLグロノラクトンオキシダーゼという酵素を働かせビタミンCを体内で合成している。霊長類はこのLグロノラクトンオキシダーゼが働かないのである。つまりビタミンCの生成を封印している状態なのである。


ビタミンCは副腎がアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンを産生するときの原料になる。そのためか、副腎における濃度が体内で一番高く、血中濃度の150倍もある。アドレナリンは、闘争と逃避のホルモンと呼ばれ、動物が獲物を襲うときのストレス反応や、逆に捕食者に狙われた時に瞬時に逃げるストレス反応を全身の器官に引き起こすホルモン。コルチゾールは強力な抗炎症、抗ストレス作用をもつホルモン。

脳はブドウ糖(グルコース)のみを栄養にして活動しているが、もし、人間にビタミンCを体内でつくる能力が失なわれていなかったら、強いストレスを感じると、コルチゾールをつくるための原料として、ブドウ糖をビタミンCに変えてしまい、結果、脳が低血糖状態になって、思考能力が低下してしまうのではないかと考えらえている。脳を守るためには、脳で使いたいブドウ糖を極端に消費してしまうビタミンCの合成は不要となったのだったのだろう。


しかし、人間はビタミンCの自己生成能力を失っため、ビタミンC欠乏で副腎疲労を起こし、大きなストレスを受けることとなった。そして人間は食べ物からビタミンCを摂取しなければならない宿命を背負った。1日あたりの摂取量は、男女とも成人で100㎎。妊婦の場合は1日110mg、授乳婦の場合は1日150mgが必要と考えらえている。


3.ビタミンCの体内での使われ方


①シミの予防
表皮は角層・顆粒層・有棘層・基底層の4層でできている。一番下にある基底層には、メラノサイトという色素細胞があり、肌に紫外線が当たると表皮の下にある真

皮に紫外線が届かないようにメラノサイトがメラニンという色素を合成する。強い紫外線に当たると日焼けするのは、このメラニンが合成されるから。

メラニンは、通常は皮膚のターンオーバー(新陳代謝によって深いところでできた細胞が表面に登っていって垢となって排出されること)が進むにつれて角質などの

不要物と一緒に垢になり体外に排出されます。一般的には、一度生成されたメラニン色素は28日~56日程度で体外に排出される。

ターンオーバーがスムーズに行われない状態になると、メラニン色素がうまく排出されずに色素沈着を起こし、シミとなる。

ビタミンCには、シミの原因であるメラニン色素の過剰生成を抑える効果がある。また、色素沈着したメラニン色素を元の色素に戻す還元作用がある。そのため、一

度できたシミを薄くすることができる。

②シワの予防と改善
シワの主な原因は、皮膚のコラーゲンの減少。年齢を重ねていくと、皮膚の細胞の新陳代謝などの働きも次第に活発ではなくなり、肌の弾力とハリに大きく関係がある皮膚の真皮にあるコラーゲン・エラスチンと・ヒアルロン酸を生成する繊維芽細胞の働きが衰えて、コラーゲン・エラスチンと・ヒアルロン酸がうまく生成されなくなり、肌の弾力がなくなっていく。

ちなみに、赤ちゃんの肌にすごく弾力やハリがあるのは、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸が正常に生成されているから。

加齢の他にも、紫外線もシワの原因の一つ。皮膚の深部まで届いた紫外線がコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸自体を破壊してしまうから。肌の弾力やハリがなくなると、肌の柔軟性もなくなってクセがつきやすくなりシワができやすくなる。皮膚をよく動かす口元や目元の部分からシワができていく。ビタミンCは、真皮のコラーゲンの生成を助ける働きがある。また、コラーゲンを生成する時に働く酵素を助けている。

③ニキビ予防
皮脂が過剰に分泌されると、皮脂で毛穴に詰まってしまい、その詰まった皮脂をエサにしてアクネ菌が繁殖して炎症が起こり、ニキビとなる。ビタミンCには、皮脂の分泌量を正常な量に抑える働きや抗炎症作用がある。肌の毛穴の開きは、皮脂が過剰分泌されることで悪化するので、ビタミンCによって、皮脂の分泌を抑えると毛穴を目立たなくできる。

④疲労回復
ビタミンCには、活性酸素の発生抑制効果がある。

⑤免疫力UP
ビタミンCには、体内に侵入したウイルスを排除する働きがある白血球を強化し、免疫力を高めてくれる。

⑥貧血防止
ビタミンCには、体内に取り入れた鉄の吸収率を上げるので、貧血を防ぐことができる。

⑦ストレス解消
ビタミンCは、副腎皮質ホルモンを合成するために必要な成分で、十分にビタミンCを摂取すると、副腎皮質ホルモンの分泌を促進させることができる。

4.壊血病はそうそう起こらない

健康な人体には900~1500mgのビタミンC(アスコルビン酸)が存在しており、体内のビタミンCが500mgを切ると脱力や体重減少、鈍痛に加え、次のような症状が見られる。いわゆる壊血病である。
①皮膚や粘膜、歯肉の出血およびそれに伴う歯の脱落、変化、これらの影響で息が臭くなる。
②創傷治癒の遅れ
③低色素性の貧血
④感染への抵抗力の減少
⑤古傷が開く、末期になると骨折して治った骨もはがれる。
壊血病の原因は、ビタミンCが体内のタンパク質を構成するアミノ酸の1つであるヒドロキシプロリンの合成に必須であるため、これが欠乏すると組織間をつなぐコラーゲンや象牙質、骨の間充組織の生成と保持に障害を受ける。これがさらに血管等への損傷につながり上記のような症状になる。
ただし、上記のように健康な人体には「500mgを切る」までのビタミンCに余裕があるので、これらの症状は3~12ヵ月に及ぶ長期・高度のビタミンC欠乏でないと生じない。大航海時代の慢性的な壊血病の発生は、出帆前からビタミンC欠乏の生活をしていた船員に発生したものであると考えらえている。

厚生労働省が定めるビタミンCの1日の所要量は800㎎と多い。これは壊血病を防ぐために算定された最低必要量であるといわれている。ビタミンCは水溶性なので、ほとんどが尿と共に体外に排出されてしまうので、ビタミンCの効果を実感するには1日300〜500mgを摂取する必要がある。但し、人によっては、1000㎎で過剰摂取の副作用として下痢を起こすことがあり、2000㎎を一回で摂取すると吐き気をもよおすことがある。また、過剰摂取で尿路結石を起こすことがある。












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