2017年10月21日土曜日

地球の生命を支えているエネルギー源


生命の宿る星=地球。その生命を支えているエネルギー源はブドウ糖。
そのブドウ糖は光合成によって植物がつくっている。


はじめに、生命とは? 生きものとは何でしょうか? 生きものは食べるための形をしている。手足も筋肉も食べもののあるところへ移動するために、そして食べものを捕まえるために発達してきたといえる。よく見える眼も、発達した脳も、食べものを食べるために発達したといえる。「食べること」が生きものの原点といえるだろう。

地球の生命はみな細胞でできている。細胞を維持するために、ブドウ糖を吸収して、水と炭酸ガスに分解することで、ブドウ糖からエネルギーを取り出す。これを異化という。異化によってブドウ糖により得られたエネルギーをつかってタンパク質の基になるアミノ酸を原料に自分の体のタンパク質をつくる。これを同化という。異化と同化をあわせて代謝という。ウイルスは遺伝子は持っているが、代謝機能をもっていないので生物ではない扱いになる。

生物は食べたら増える。自己を複製する機能をもっている。

上の図は地球誕生から現在までの46億年の歳月を1年(365日)に換算した表。1月1日に地球が誕生し、最初の生命が誕生したのが39億年前(2月25日頃)と考えられている。生きものは食べて増える。増えたら、増えた分だけ食べて、また増えるを繰り返すので、地球に誕生した最初の生命は、もともと地球にあった有機物を、すぐに、すべて食べつくしてしまったと考えられている。そしてこれによって生命にとっての最初の試練が与えられる。それは飢餓であったと考えられている。現在、地球に多様な生命が生きているのは、この試練を乗り越えたからである。

飢餓から生命が脱出できたのは、太陽エネルギーを生きるためのエネルギーに変換する光合成能力を獲得できたからである。27億年前(5月31日頃)のことと考えられている。

太陽からの熱は、実際には熱というようよりは電波である。熱とは、分子の移動速度であり、電波が物質にあたると物質を構成している分子を振動させて、物質の分子の移動速度を早くし、熱を生じさせる。太陽の熱は絶対温度で6000K。それが地球にふりそそいで地球を255Kまで暖めている。太陽からやってきた電波によって地球の表面の分子が振動しているのである。絶対温度の0℃は摂氏温度でマイナス273.15℃なので、255Kとはマイナス18℃となる。地球を暖めた熱のほとんどは宇宙空間に逃げていってしまう。

光合成によって作られるブドウ糖の中のカロリー(熱量)は、太陽で生産される莫大な熱の、ほんの少しをいただいたものといえる。


光合成のよってつくられるブドウ糖はカロリーを持っている。ブドウ糖100gあたり335.1kcalある。1kcalは1リットルの水の温度を1℃上昇させることができる熱量なので、335.1kcalとは、20℃の水、4リットルを100℃まで上昇させることができる熱量となる。


光合成とはどのような仕組みになっているのか?上の写真はオオカナダ藻の顕微鏡写真。細胞の中にある緑色の丸い粒が葉緑体で、この葉緑体の中で光合成は行われている。

上の図は、高校の生物の資料集に記載されていたものの転写。左から葉緑体の電子顕微鏡写真。黒い粒はデンプン粒というブドウ糖を原料に作られたデンプンの粒。真ん中のイラストは葉緑体の構造図。二重膜構造になっていて、内側の膜の上に太陽光を受け止めるソーラーパネルが乗っている。


上の図は、同じく高校の生物の資料集より、「同化色素」というは、光を吸収する緑色の色素=クロロフィルのこと。「同化」とは自分の体でないものを吸収し、自分の体をつくること。光合成は無機物の二酸化炭素と水と太陽エネルギーをつかって有機物のブドウ糖をつくる「炭素同化」ということができる。
光を受け止めるクロロフィルの中心構造はマグネシウムでできていて、4つの窒素がマグネシウムを支えている。全体はポリフィン環という炭水化物でできている。それにフィトールというやはり炭水化物でできている尻尾がついている。凧のような形をしている。

光合成は明反応と暗反応の2段階でブドウ糖をつくる。まず明反応について、①光をマグネシウムでできているソーラーパネルで受け止めて、光を電気に変える。②電気で水を電気分解して水を水素と酸素に分ける。酸素はいらないので捨ててしまう。③水素イオンはATP合成酵素を通過するときに、ATPをつくる。ATP合成酵素は、水素イオンで回転するタービンのような仕組みで、回転のよって生じる摩擦エネルギーを使ってATPをつくっている。光という形のないものから水素イオンという形のあるものを得る。水素は単体でもエネルギーをもっている物質で、火をつけると爆発する。

エネルギーはあっても爆発するようなものを貯蔵することは危険すぎるので、炭酸ガスと水をつかって、安定した物質であるブドウ糖にする。これが暗反応。葉緑体の中には炭酸ガスを捕まえるルビスコという酵素があり、ATPに一時的に貯められたエネルギーをつかってブドウ糖がつくられる。


通常の酵素は毎秒1000個の分子を処理できるが、ルビスコは毎秒たった、約3分子の二酸化炭素しか固定できない。これは極めて効率が悪い酵素ということができる。その理由はルビスコが酸素と二酸化炭素を区別できず、酸素を捕まえてしまうと、その酸素を除去するするまで、新たに二酸化炭素を捕まえることができない。ルビスコの含有量は、ホウレン草100g食べたら、そのうち1gがルビスコというくらい多い。葉緑体のタンパク質の約半分がルビスコとなっていて、地球上でもっとも多い酵素ということもできる。

太陽は水素と水素との核融合によって膨大なエネルギーを生産している。光合成では太陽からもたらされた光を活用して水を分解して水素を取り出している。水素のままでは危険なので、安定したブドウ糖にしている。生物の生きるエネルギーはブドウ糖をミトコンドリアの中で水素イオンにまで分解してエネルギーを取り出している。つまり、水素を媒介としたエネルギー流れといえる。


光合成によって得られたブドウ糖。ブドウ糖を同じ方向につなげていくとデンプンになる。また、ブドウ糖を互い違いにつなげていくとセルロースになる。


ブドウ糖は炭素と水の化合物。つまり炭水化物。


ビタミンなどの栄養価も、ブドウ糖からつくられる。


細胞を構成しているタンパク質の原料であるアミノ酸も、原料はブドウ糖である。


植物の体の9割は炭素と水素と酸素でできている。

金星と地球と火星は、兄弟の星だが、地球だけに生命が宿っている。金星と火星の大気の95%以上が二酸化炭素だが、地球は窒素が78%で酸素が20%で二酸化炭素はわずかに0.03%しかない。地球の二酸化炭素が少ないのは、海に溶け込んでいるために少ないのだが、地球の酸素20.9%はこれは光合成によって生産されたものがたまりにたまったものである。
わたしたちは酸素がないと3分といけていけないほどに、酸素に依存して生きている。そして、その酸素は植物が光合成によって生産している。では、わたしたちが必要としている酸素は、いったいどれだけの植物によって支えられているのだろうか?

人間は1回呼吸するたびに25mgの酸素を消費する。1分間に15回呼吸するとして1時間あたり22.5リットルが消費されている。22.5リットルを重さに換算すると32g

10㎝四方のトウモロコシの葉は1時間あたり40~50mgの酸素をつくっている。人間は1人あたりが必要な1時間あたり32gの酸素をつくるには10㎝四方のトウモロコシの葉が640枚~800枚必要という計算になる。つまり6.4~8㎡の大きさの葉が必要となる。

実際には光合成をおこなっているのは太陽の出ている昼間だけなので、必要な葉の面積はこの2倍の12.8~16㎡となる。1辺の長さは2.8~4mとなる。


野菜を食べて健康で長生き!

オーガニックファーミングを日本語に訳して、有機農業という言葉をつくった人=一楽輝雄先生は農協をつくった人でもある。その一楽輝雄先生は農協をつくった目的を「誰もが達者で長生きできる社会の実現のために」と語っている。農業のめざすべき、最大の達成目標は、いつの時代も、健康で長生きなのである。近代国家を目指した明治時代、食べ物を生産する農学と病を治す医学は、双璧をなす学問であった。現代の日本ではどうだろう。農学は医学ほどに重要視されているだろうか?


人類は多くの病を克服したが、ガンだけは未だに克服できていない。人間は進化の過程で、他の生物よりも、ガンになりやすい生物になってしまっている。上の図は人口10万人あたりのガンが原因でなくなった人の数の推移である。1985年を境に、日本とアメリカが逆転している。現在社会においては、日本人はアメリカ人よりもガンで亡くなる人が多くなっている。上のグラフからいえることは、アメリカはガンを克服しつつあるということ。アメリカはどのようにしてガンを克服しているのだろうか?


上の図は、日本における医療費の増加を示している。年間40兆円の医療費というのは、国民所得の1割、国民総生産の1割に達する額である。医療費の増大は国家を破綻させるほどに深刻な問題となってきている。この問題に日本よりも早くから直面したのがアメリカであり、アメリカは膨大な医療費の削減のために、病気にかからないようにする食事の改善などの予防医学を発展させてきた。

1971年12月23日、ニクソン大統領の時に「米国ガン対策法」ができて、本格的なガン治療の研究が始まる。ニクソン大統領の次のフォード大統領は「こんなに医学にお金をかけて、医療がこれだけ進んでいるのに、どうして病気の人が減らないんだ!」という疑問から、その時の「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」の委員長で、当時、副大統領だったマクガバンに命じて調べさせた。当時アメリカの平均寿命は世界で26位、医療費は世界一。1977年の医療費は1180 億ドル(約 25 兆円)であった。当時の死亡原因の1位は心臓病で、ガンは2位であったが、1位の心臓病の医療費だけで、すでに国家の財政が破綻するほどの額になっていた。

マクガバン氏がまとめたレポートは「マクガバンレポート」とよばれ、2年の歳月をかけて、被験者3,000人を調査したもので、報告書のページ数は5,000ページにもなった。

マクガバンレポートの内容は「諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした『食原病』であり、薬では治らない。」よって「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を改善する必要がある。」として、7項目の食事改善の指針を提案。その内容を要約すると、高カロリー、高脂肪の食品、つまり肉、乳製品、卵といった動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂るようにしたほうがよいというもの。このレポートは、その後、栄養学や予防医学が発展するきっかけとなったが、肉はダメだというものでもあり、畜産業界からは非難を受けた。

このレポートがきっかけで、アメリカでは「もっと野菜を食べよう運動」が展開され、実際に、野菜の消費量が増え、ガンの死亡率が減っている。


マクガバンレポートでは、理想の食事として「元禄時代以前の日本の食事」が取り上げられている。これは、炭水化物:55~60%・タンパク質:15~20%・脂質:20~25%という三大栄養の摂取バランスがきわめて理想的な値であったためである。2005年に厚生労働省と農林水産省が発表した「食事バランスガイド」とも、ほぼ同じ数値になっている。

アメリカの「もっと野菜を食べよう運動」は具体的な成果を上げている。上の図は日本とアメリカの1人あたりの野菜摂取量を比べたもの1990年に逆転している。日本はどんどん下がっているが、アメリカは顕著に右肩上がりである。このグラフとガンの死亡者数グラフが見事に同じことから、野菜を食べることがガンの予防に直結するということもできる。

上の図は野菜別の摂取量の増減を示している。このグラフからアメリカのもっと野菜を食べよう運動を通じて、アメリカでは緑黄色野菜が積極的に食べられるようになったことがわかる。つまり生野菜サラダである。生野菜サラダがたくさん消費されるようになった背景には、畑から食卓まで低温状態で、しっかり鮮度管理されたまま、輸送できるコールドチェーンの物流システムが確立したことが大きい。物流の技術進化で、生野菜サラダが手軽においしく食べれるようになったのである。


1990年、ガンを予防することができる成分を特定し、それを含んだ加工食品をつくることを目的に、アメリカ政府は2000万ドルの予算をかけて、アメリカ国立ガン研究所 (NCI) に、どのような野菜に、どのような成分があるのかを調べた。そして細胞の老化を防止することができる抗酸化力のある成分をファイトケミカルと名付けた。上の図は、ピラミットの上に行くほど、抗酸化力の強い野菜であることを示している。


栄養学のはじまりは、古代ギリシャの医学者ヒポクラテスが「治療の原理は本来人間に備わっている自然力の働きを助けることであり、特に食事に注意することが大切である」と述べたことに始まるといわれている。

現在の栄養学では、体の細胞をつくり、細胞が生きていくエネルギー源となるタンパク質・炭水化物(糖質)・脂質の三大栄養素。

戦前は死亡する人も多かった、脚気・壊血病・くる病が、20世紀の初頭にビタミンの発見で、ビタミンの欠乏によって起こることがわかり、その後の研究でビタミンやミネラルが酵素の働きを助け、代謝を良くしているというメカニズムが解明され、ビタミンとミネラルが栄養に加わり、五大栄養素となった。

ビタミンB1欠乏でおきる脚気やウェルニッケ脳症。ビタミンB1が欠乏すれば、ミトコンドリアのクエン酸回路が正常に働かず、心臓や脳にも異常が出る。ビタミンC欠乏で、壊血病・倦怠感・関節痛が起きる。ビタミンCが欠乏すれば、ミトコンドリアの電子伝達系が働かず、コラーゲンも作れないので出血が多くなる。ビタミンD欠乏で、くる病・骨軟化症・骨粗鬆症が起きる。ビタミンDが欠乏すれば、カルシウムの代謝がうまく出来ず、骨が弱くなり、精神的な病も招きます。

かつては消化できないので、当然のように吸収もされない。だから栄養ではないと考えられていた食物繊維が、実は腸内細菌を活性化させ、この腸内細菌が人の免疫システムを活性化し、健康に大きくかかわっていることがわかってきて、食物繊維を加えて六大栄養素となった。

野菜や果物から摂取できるポリフェノールやベータカロテンなどの抗酸化物質が、細胞の老化を防止し、ガンの抑制になることがわかり、ファイトケミカルを加えて七大栄養素となった。

デザイナーズフード計画は2年で中止になるが、「もっと野菜を食べよう運動」は、具体的に農産物を生産している農業者団体が中心となり継続される。1991年、非営利団体の農産物健康増進基金(PBH)が設立され、アメリカ国立ガン研究所(NCI)の協力のもと、「5A DAY」プログラムがはじまる。「5A DAY」とは、「野菜を毎日5皿食べよう」というもの。炭水化物を6~11皿。タンパク質を乳製品と肉・魚・卵・ナッツ・豆類に分けて
それぞれ2~3皿。脂質は控えめにという栄養バランスを啓蒙するためのものであったが、健康のために「野菜を1日5皿食べる」というわかりやすさから広まっていった。

10年後の2001年には、七色の野菜、または青/紫・緑・白・黄/橙・赤の5色の中から彩りよく選んで食べる「5A DAY THE COLOR WAY」キャンペーンはじまり、これによって野菜を売るスーパーマーケットの野菜コーナーも、非常にカラフルになった。


1997年、アメリカ国立ガン研究財団と世界ガン研究基金は、世界で発表されている4500ものガン予防についての論文をまとめ、「ガン予防14カ条・プラス1」を発表。食生活を改善したら、ガンは3~4割も低減できるとしている。その内容は以下のようなもの。

①植物性食品を中心に、さまざまな食べ物をとること
②適正な体重を維持すること
③活動的な生活を続けること
④彩な野菜類・くだもの類をとること
⑤穀類や豆・根菜を豊富にとること
⑥アルコール類の飲用はすすめられないこと
⑦赤身の肉(牛肉、豚肉など)は1日80g以下にすること
⑧動物性脂肪の多い食品の摂取を抑えること
⑨塩分の摂取量は1日6g以下にすること
⑩カビ毒で汚染されたものは食べない
⑪腐りやすい食品の保存は、冷蔵か冷凍にすること
⑫食品添加物や残留農薬成分の摂取は避けること
⑬黒焦げになったものは食べないこと
⑭これらの注意を守れば、補助食品・補助栄養剤はいらないこと
プラス1として:喫煙はしないことがあげられている。

2017年10月17日火曜日

人間は他の動物よりもガンになりやすい!


人間は他の動物よりもガンになりやすい生物なのだそうだ!

上の図は日本人の死因別の死亡者数の割合をグラフにしたもの。ガンで亡くなる人が一番多く28.3%となっている。

 ※ 以下、NHKスペシャル病の起源ガン=人類進化が生んだ病より

●ガンとは何か?

正常な細胞は、ある程度分裂を繰り返したり、分裂の段階でDNAのコピーにミスが生じたとき、自ら死に至るアポトーシス(細胞死)という性質が組み込まれている。 ガン細胞は、そのアポトーシスの仕組みが失われており、栄養分と酸素さえあれば無限に分裂・増殖を繰り返していく。 ガン細胞の怖いところは、血液やリンパ液の流れに乗ってガン細胞が他の臓器に転移することである。腫瘍ができても、それがその場にいつまでも留まっていれば、手術で取り除くことができる。

ガンは特殊な病でなく、毎日体内で発生するのが、ごく自然なことで、ただそれが命に関わるほど悪化する前に、①DNAの損傷が修復されたり、②アポトーシスによって消去されたり、③免疫細胞に駆除されていて、毎日、数千個が発生するが、発病しないように処理されている。


ガン細胞と通常の細胞との違いは、通常の細胞は隣の細胞に接すると増殖を停止するが、ガン細胞はこの機能が失われていて、無限に増殖する。また、細胞の寿命がなく、不死であるという特徴がある。

●人間はガンになりやすい生きもの

ガンは多細胞生物の宿命。5億5千万年前の恐竜の骨でガンが見つかっている。 人間はガンになりやすい動物だといえる。チンパンジーと人間の遺伝子の違いはわずか1%であるが、ガンになる確率は15倍も高く、ガンによる死亡もチンパンジーが2%に対し、人間は30%にもなる。 進化の過程で、人間はなぜガンになりやすくなったのか?

●二足歩行とガンの関係

二足歩行ができるようになって、両手が自由に使えるようになって、男は女に食べものを運び、女はその代償として交尾をさせるという生態ができ、男は狩り、女は子育ての分業が確立した。 人類は二足歩行を獲得したが、代わりに骨盤が狭くなってしまったために人間の赤ん坊は未熟で生まれるようになり、子どもが一人前に歩き回れるようになるまで3年間、女は男を繋ぎ止めておく必要が産まれた。 チンパンジーではメスに明確な発情期があり、対応するようにオスの精子を作る細胞の増殖は一定期間で終わるシステムになっている。 人間の場合、女は発情期を明確に示さなくなり、男は子孫を残すために、いつでも精子を準備しておかなくてはいけなくなった。精子をつくる細胞に変化が生じ、際限なく分裂できるように進化した。そして人間のガンは、この精子製造の際限なく分裂できる増殖システムを取り入れて狂暴化した。

●脳の巨大化とガンの関係

脳の急速な巨大化を支えたのは、細胞増殖に必要な脂肪酸を作る酵素FASが深く関与している。

人のFAS酵素は他の動物と比べて強力に変異して、脳の巨大化を助けた。だが人のがんは精子増殖と同様に、パワーアップしたFASを大量に集中利用し、大増殖して人のガンを増大させた。

ガブリエル・ロネット博士は、ガン細胞は、アポトーシス(細胞死)の仕組みが失われており、栄養分と酸素さえあれば無限に分裂・増殖を繰り返していくため、細胞内に脂肪を貯蔵できるはずがない。それなのに、脂肪を貯蔵する働きをするFAS酵素がガン細胞内に大量に存在していたことを発見した。その後の研究によって、ガン細胞は、FAS酵素をエネルギーを貯蓄するために使うのではなく、FAS酵素がつくる脂肪酸を増殖分裂の際のエネルギーとして使っていることを明らかにした。



FAS酵素の働きを止めれば、ガンは増殖できず死滅することがわかり、。抗がん剤FAS酵素阻害薬C31が発明された。C31は開発中ではあるが、殆ど総てのガンに効果がある画期的な治療薬として注目されている。

全身の細胞は休むことなく新陳代謝されているが、FAS酵素阻害薬C31は1日の投与でガン細胞にダメージを与える。1日なら、正常な細胞分裂が止まっても問題は少ない。臨床試験が終われば、ガンの有力な特効薬となる。




●出アフリカがもたらしたガン

人類はアフリカに生まれ、6万年前に他の地域へ広がっていった。寒冷で紫外線が少ない米国ネブラスカ州プリモント市は全米一番、大腸ガンによる死者が多い。紫外線によって生成されるビタミンD不足が大腸ガンに関係している。大規模な比較実験では、ビタミンD服用者たちの大腸ガン発症は半分になった。


●電気の発明とガンの関係

メラトニンは夜間に眠っている時に増え、ガンを抑制する働きがあるホルモン。眠っている時にか分泌されず、夜間勤務者はメラトニンが5分の1しか分泌されず、乳ガンは2倍、前立腺ガンは3倍に増えた。 2009年にデンマークでは夜勤看護師の乳ガンと前立腺ガンに労災が適用されている。日本人女性は16人に1人が乳ガンにかかるという。そして乳ガン発病者の2割が死亡している。乳ガンは転移しやすいためと考えられる。

2017年10月14日土曜日

植物は硝酸が少ない方が栄養価が高まる

1.硝酸はほんとうに悪者か?

地球に生きる生物の体は、タンパク質でできている細胞でできている。タンパク質は窒素を含むアミノ酸を原料につくられている。地球の大気の7割は窒素でできているが、植物も動物も、この空気中の窒素を利用することができない。植物は根から水を吸収するときに、土中の水にとけた窒素を水と一緒に吸収することができる。水に溶けている土中の窒素=硝酸、亜硝酸、アンモニアを吸収して、それらを材料にアミノ酸を合成することができる。動物は、硝酸、亜硝酸、アンモニアからアミノ酸を合成することはできないので、植物がつくったタンパク質を食べるしかない。

根から吸収された硝酸はアミノ酸になり、タンパク質になり細胞になっていく。したがって、野菜の硝酸塩(硝酸イオン)の含有量が、少ないほど、窒素同化が盛んであるということができる。逆に硝酸が多い野菜は、硝酸が過剰に供給されているか、窒素同化の能力が低いということができる。

硝酸は、味として苦味、えぐみとして感じられるので、硝酸が多い野菜は「まずい」ということもできる。

硝酸には中毒症状がある。WTO(国連保健機関)は、飲み水に含まれる硝酸イオンが50mg/ℓ(窒素量としては11.3 mgN/ℓ)になる場合に中毒になる可能性があるとしている。これを受けて、1993 年に「水質汚染防止法」が改正され、硝酸態窒素および亜硝酸態窒素は要監視項目に指定される。1999 年に「公共用水域及び地下水の人の健康の保護に関する水質環境基準」に硝酸態窒素および亜硝酸態窒素の項目が追加され、その値は窒素量で 10 mgN/ℓ以下と定められた。これは硝酸イオンに換算すると、44.3 mg/ℓに相当する。

農林水産省のHPには、厚生労働省が厚生省だった1988年に調査した野菜の硝酸イオン量が記載されている。学校給食の献立をつくるための五訂日本食品標準成分表には、硝酸イオンの含有量の目安が記載してある。

EUではホウレン草とレタスについて法律で含有量の規制が設けられている。この基準が定められた背景には、①ブルーベイビー症候群、②地下水の硝酸汚染の2つがあるといわれている。

①ブルーベイビー症候群とは
第二次世界大戦後から1986年までの間に、欧米では2000件以上の硝酸中毒事故があり、乳児を中心に160人が死亡している。特に1956年には、278人の乳幼児がこの中毒にかかり、そのうち39名が死亡したとといわれる。原因は裏ごしされたホウレン草で、これを離乳食として食べた乳幼児が、急性硝酸塩中毒をおこし、チアノーゼを発症し、全身が真っ青になって30分程度で死亡してしまったという。この事件は、全身の皮膚が真っ青になる症状から「ブルーベビー症候群」といわれた。アメリカでは、1950年代から1965年ごろに多く発生し、1060件の症例の報告があり、83の論文に死亡例が出ている。硝酸は窒素に酸素が3個もついているため、赤血球の中のヘモグロビンが酸素と間違えて、酸素の必要な場所に運んでしまうのだが、硝酸の酸素は使えないため、酸欠を起こしてしまう症状。乳幼児は細胞分裂が盛んで、酸素が大量に必要となるので、特に影響を受けやすく、死亡することもある。


②地下水の硝酸汚染
上の図は、河川の窒素濃度を推定したもの。欧米で起こった「ブルーベリー症候群」の原因の真の犯人は地下水の硝酸汚染だったかもしれない。戦時中は火薬の原料になっていた硝酸。それが戦争終結と共に余ったために化学肥料として大量に農地にまかれたともいわれている。

牛が摂取した硝酸イオンは第一胃の細菌の働きで硝酸塩は還元されて亜硝酸になる。亜硝酸はさらに還元されてヒドロキシルアミンとなり、最終的にはアンモニアにまで還元される。亜硝酸やヒドロキシルアミンなどは、第一胃の粘膜から吸収されて血液に入り、血液中の赤血球のヘモグロビンと結合し、酸素の供給を阻害する。これが原因で死亡する牛は毎年、少なからずいる。特に1日に100ℓもの水を飲む乳牛は、地下水に含まれている硝酸の影響を受けやすい。

河川の窒素濃度を上昇させているのは、田畑に投入される肥料によるものである。窒素肥料の窒素は水に溶けやすく、田畑に投入される窒素は、雨水によって溶け出して、河川に流亡し易い。

2.アミノ酸態の肥料の可能性

高校の理科で生物を選択する生徒が減っているという。理由は、ここ10年で、生物の世界では新発見が多くあり、従来の教科書の内容がどんどん塗り変わっていることによる。つまり、生物を選択すると大学受験の試験に困ることになるというのが、生物離れの原因なのである。
植物はアミノ酸態の窒素も直接的に利用できることがわかってきた。上の図は、2007年に福島県農業総合センターの二瓶直登氏の研究成果。グルタミンの窒素を放射性元素に変えて、それが吸収される様子を追いかけたもの。

硝酸よりもグルタミンやアルギニンの方、吸収がよい。また寒くても、吸収がよいこともわかった。このことは農家さんの方がより実感していることかもしれない。フィッシュソリブルでホウレン草をを育てると、冬でもぐんぐん伸びる。

人間は硝酸をアミノ酸に同化することはできないが、植物は硝酸を原料にアミノ酸に同化できる。上の図は、硝酸を亜硝酸に、亜硝酸をアンモニアに同化する行程。硝酸は、細胞質にあるモリブデンを含む酵素によって亜硝酸に還元される。亜硝酸は葉緑体の中にある鉄と硫黄を含んだ酵素によってアンモニアに還元される。

アンモニアはミトコンドリアの中にあるマグネシウムかマンガンを含んだグルタミン合成酵素によってグルタミンになり、グルタミン酸合成酵素によってグルタミン酸になる。その後は各種アミノ基移転酵素によって他の各種のアミノ酸に合成されていく。


硝酸をアミノ酸にするために、植物は光合成によって生産したブドウ糖を多く消費しなければならない。
硝酸を亜硝酸にする行程でも、亜硝酸をアンモニアにする行程でも、アンモニアをアミノ酸にする行程でも、ブドウ糖を原料にしたエネルギーを消費する。アミノ酸態で作物を育てると、硝酸→亜硝酸→アンモニア→アミノ酸という行程を省略できる。よって、この行程で消費されるブドウ糖がまるまる余ることになる。

①余ったブドウ糖はセンイでできている外壁の強化に使われ病害虫に強くなる。②余ったブドウ糖で根酸が増えミネラルの吸収がよくなる。③余ったブドウ糖で糖度が上がる。④余ったブドウ糖を原料にビタミンなどの栄養成分が増える。⑤余ったブドウ糖で貯蔵デンプン量が増えて重量が増す。

また、硝酸、亜硝酸、アンモニアの場合は、根から吸収した後、葉へ一度上げて、葉の中でアミノ酸にした後、根を伸ばすためには、葉から根の生長点へ戻すということをしなくてはならないが、アミノ酸の場合は葉へ上げる必要がないため、根の細胞を増加させるスピードが速くなり、根量の多くなる。


炭水化物つきの窒素であるアミノ酸で、作物に窒素を供給することは、上の図のように、発酵菌の働きによってバイパス(近道)をつけたようなものである。

地球の生命の生きるためのエネルギーであるブドウ糖と、生きものの体を構成する細胞の原料であるタンパク質のもととなるアミノ酸も、植物がつくる。つまり光合成によって、水と炭酸ガスと太陽エネルギーからブドウ糖を生産し、土壌の無機の窒素、つまり硝酸やアンモニアを吸収して、光合成によって生産されたブドウ糖と合成してアミノ酸をつくる。

動物は植物を食べる従属栄養生物である。植物も動物も、死ぬと分解者によって、無機物に分解されていく。この自然の循環の中で、アミノ酸肥料は、動植物の死骸のタンパク質を発酵菌によってアミノ酸に分解して供給するもので、無機物にすることなく、半分解で、炭水化物とカロリーを保持したアミノ酸で植物に供給することで、植物はアミノ酸を合成するためのエネルギーを節約できるので、生育が加速し、あまったブドウ糖のために品質が向上する。


アミノ酸肥料の弱点。つまり有機栽培の弱点は、アミノ酸や有機酸が土壌中で分解されるときに炭酸ガスが発生し、土壌が団粒化し、根の張りがよくなり、根の量が増える。さらに、アミノ酸や有機酸は酸なので、ミネラルをよく溶かす。このため作物はミネラルの供給がよくなり、光合成能力も向上し、ミネラルを溶かすために根から放出している根酸が増えて、さらにミネラルの供給がよくなる。これは弱点でないように思うかもしれないが、土壌から作物へ供給されるミネラルは無限ではないので、枯渇し、作物は欠乏症から病気になったり、健康状態がわるくなり、害虫害に会い易くなる。

これを防止するには、土壌分析を行い、土壌の栄養ミネラルの減少をモニタリングして、必要なミネラルを肥料として施肥する必要がある。