2017年10月21日土曜日

野菜を食べて健康で長生き!

オーガニックファーミングを日本語に訳して、有機農業という言葉をつくった人=一楽輝雄先生は農協をつくった人でもある。その一楽輝雄先生は農協をつくった目的を「誰もが達者で長生きできる社会の実現のために」と語っている。農業のめざすべき、最大の達成目標は、いつの時代も、健康で長生きなのである。近代国家を目指した明治時代、食べ物を生産する農学と病を治す医学は、双璧をなす学問であった。現代の日本ではどうだろう。農学は医学ほどに重要視されているだろうか?


人類は多くの病を克服したが、ガンだけは未だに克服できていない。人間は進化の過程で、他の生物よりも、ガンになりやすい生物になってしまっている。上の図は人口10万人あたりのガンが原因でなくなった人の数の推移である。1985年を境に、日本とアメリカが逆転している。現在社会においては、日本人はアメリカ人よりもガンで亡くなる人が多くなっている。上のグラフからいえることは、アメリカはガンを克服しつつあるということ。アメリカはどのようにしてガンを克服しているのだろうか?


上の図は、日本における医療費の増加を示している。年間40兆円の医療費というのは、国民所得の1割、国民総生産の1割に達する額である。医療費の増大は国家を破綻させるほどに深刻な問題となってきている。この問題に日本よりも早くから直面したのがアメリカであり、アメリカは膨大な医療費の削減のために、病気にかからないようにする食事の改善などの予防医学を発展させてきた。

1971年12月23日、ニクソン大統領の時に「米国ガン対策法」ができて、本格的なガン治療の研究が始まる。ニクソン大統領の次のフォード大統領は「こんなに医学にお金をかけて、医療がこれだけ進んでいるのに、どうして病気の人が減らないんだ!」という疑問から、その時の「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」の委員長で、当時、副大統領だったマクガバンに命じて調べさせた。当時アメリカの平均寿命は世界で26位、医療費は世界一。1977年の医療費は1180 億ドル(約 25 兆円)であった。当時の死亡原因の1位は心臓病で、ガンは2位であったが、1位の心臓病の医療費だけで、すでに国家の財政が破綻するほどの額になっていた。

マクガバン氏がまとめたレポートは「マクガバンレポート」とよばれ、2年の歳月をかけて、被験者3,000人を調査したもので、報告書のページ数は5,000ページにもなった。

マクガバンレポートの内容は「諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした『食原病』であり、薬では治らない。」よって「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を改善する必要がある。」として、7項目の食事改善の指針を提案。その内容を要約すると、高カロリー、高脂肪の食品、つまり肉、乳製品、卵といった動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂るようにしたほうがよいというもの。このレポートは、その後、栄養学や予防医学が発展するきっかけとなったが、肉はダメだというものでもあり、畜産業界からは非難を受けた。

このレポートがきっかけで、アメリカでは「もっと野菜を食べよう運動」が展開され、実際に、野菜の消費量が増え、ガンの死亡率が減っている。


マクガバンレポートでは、理想の食事として「元禄時代以前の日本の食事」が取り上げられている。これは、炭水化物:55~60%・タンパク質:15~20%・脂質:20~25%という三大栄養の摂取バランスがきわめて理想的な値であったためである。2005年に厚生労働省と農林水産省が発表した「食事バランスガイド」とも、ほぼ同じ数値になっている。

アメリカの「もっと野菜を食べよう運動」は具体的な成果を上げている。上の図は日本とアメリカの1人あたりの野菜摂取量を比べたもの1990年に逆転している。日本はどんどん下がっているが、アメリカは顕著に右肩上がりである。このグラフとガンの死亡者数グラフが見事に同じことから、野菜を食べることがガンの予防に直結するということもできる。

上の図は野菜別の摂取量の増減を示している。このグラフからアメリカのもっと野菜を食べよう運動を通じて、アメリカでは緑黄色野菜が積極的に食べられるようになったことがわかる。つまり生野菜サラダである。生野菜サラダがたくさん消費されるようになった背景には、畑から食卓まで低温状態で、しっかり鮮度管理されたまま、輸送できるコールドチェーンの物流システムが確立したことが大きい。物流の技術進化で、生野菜サラダが手軽においしく食べれるようになったのである。


1990年、ガンを予防することができる成分を特定し、それを含んだ加工食品をつくることを目的に、アメリカ政府は2000万ドルの予算をかけて、アメリカ国立ガン研究所 (NCI) に、どのような野菜に、どのような成分があるのかを調べた。そして細胞の老化を防止することができる抗酸化力のある成分をファイトケミカルと名付けた。上の図は、ピラミットの上に行くほど、抗酸化力の強い野菜であることを示している。


栄養学のはじまりは、古代ギリシャの医学者ヒポクラテスが「治療の原理は本来人間に備わっている自然力の働きを助けることであり、特に食事に注意することが大切である」と述べたことに始まるといわれている。

現在の栄養学では、体の細胞をつくり、細胞が生きていくエネルギー源となるタンパク質・炭水化物(糖質)・脂質の三大栄養素。

戦前は死亡する人も多かった、脚気・壊血病・くる病が、20世紀の初頭にビタミンの発見で、ビタミンの欠乏によって起こることがわかり、その後の研究でビタミンやミネラルが酵素の働きを助け、代謝を良くしているというメカニズムが解明され、ビタミンとミネラルが栄養に加わり、五大栄養素となった。

ビタミンB1欠乏でおきる脚気やウェルニッケ脳症。ビタミンB1が欠乏すれば、ミトコンドリアのクエン酸回路が正常に働かず、心臓や脳にも異常が出る。ビタミンC欠乏で、壊血病・倦怠感・関節痛が起きる。ビタミンCが欠乏すれば、ミトコンドリアの電子伝達系が働かず、コラーゲンも作れないので出血が多くなる。ビタミンD欠乏で、くる病・骨軟化症・骨粗鬆症が起きる。ビタミンDが欠乏すれば、カルシウムの代謝がうまく出来ず、骨が弱くなり、精神的な病も招きます。

かつては消化できないので、当然のように吸収もされない。だから栄養ではないと考えられていた食物繊維が、実は腸内細菌を活性化させ、この腸内細菌が人の免疫システムを活性化し、健康に大きくかかわっていることがわかってきて、食物繊維を加えて六大栄養素となった。

野菜や果物から摂取できるポリフェノールやベータカロテンなどの抗酸化物質が、細胞の老化を防止し、ガンの抑制になることがわかり、ファイトケミカルを加えて七大栄養素となった。

デザイナーズフード計画は2年で中止になるが、「もっと野菜を食べよう運動」は、具体的に農産物を生産している農業者団体が中心となり継続される。1991年、非営利団体の農産物健康増進基金(PBH)が設立され、アメリカ国立ガン研究所(NCI)の協力のもと、「5A DAY」プログラムがはじまる。「5A DAY」とは、「野菜を毎日5皿食べよう」というもの。炭水化物を6~11皿。タンパク質を乳製品と肉・魚・卵・ナッツ・豆類に分けて
それぞれ2~3皿。脂質は控えめにという栄養バランスを啓蒙するためのものであったが、健康のために「野菜を1日5皿食べる」というわかりやすさから広まっていった。

10年後の2001年には、七色の野菜、または青/紫・緑・白・黄/橙・赤の5色の中から彩りよく選んで食べる「5A DAY THE COLOR WAY」キャンペーンはじまり、これによって野菜を売るスーパーマーケットの野菜コーナーも、非常にカラフルになった。


1997年、アメリカ国立ガン研究財団と世界ガン研究基金は、世界で発表されている4500ものガン予防についての論文をまとめ、「ガン予防14カ条・プラス1」を発表。食生活を改善したら、ガンは3~4割も低減できるとしている。その内容は以下のようなもの。

①植物性食品を中心に、さまざまな食べ物をとること
②適正な体重を維持すること
③活動的な生活を続けること
④彩な野菜類・くだもの類をとること
⑤穀類や豆・根菜を豊富にとること
⑥アルコール類の飲用はすすめられないこと
⑦赤身の肉(牛肉、豚肉など)は1日80g以下にすること
⑧動物性脂肪の多い食品の摂取を抑えること
⑨塩分の摂取量は1日6g以下にすること
⑩カビ毒で汚染されたものは食べない
⑪腐りやすい食品の保存は、冷蔵か冷凍にすること
⑫食品添加物や残留農薬成分の摂取は避けること
⑬黒焦げになったものは食べないこと
⑭これらの注意を守れば、補助食品・補助栄養剤はいらないこと
プラス1として:喫煙はしないことがあげられている。

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